(サムネイル画像引用:公式Facebook)
モラトリアムとは主に政府による一時停止や猶予、またその期間を意味する語。
(Wikipedia参照)
ですが、モラトリアムにもいくつか種類があり、この映画はそのうちの1つである「心理社会的モラトリアム 」が意味合いとして近いと思います。
意味は、学生など社会に出て一人前の人間となるのを猶予されている状態を指すもので、本来は大人になるために必要であって社会的にも認められた猶予期間。
(Wikipedia参照)
ということでそんな大人でも子供でもない状態の人間を主人公にした映画が「もらとりあむタマ子」です。
今回は絶賛22歳無職のモラトリアム人間である僕がこの映画を見た感想を述べていきたいと思います。
ちなみに映画はAmazonプライムビデオにて視聴可能です。
もらとりあむタマ子のあらすじ
就職せず、家業を手伝うこともないまま家でダラダラした生活を毎日送っている23歳大卒のタマ子が1年かけて一歩踏み出すまでを描いた作品です。
この映画は本当に設定から登場人物、ストーリー展開まですっきりしているので全く置いて行かれることもなく楽しめます。
季節の変わりはあるものの、それによって無理やり展開が早まることもないのがとてもよかったです。
もらとりあむタマ子の感想(ネタバレ含むかも)
良かった点と微妙な点を挙げていこうと思いましたがこの映画は悪いところが全くなかったので良かった点だけ書いていこうと思います。
無職のリアルな家族関係が良い
タマ子はお父さんと二人暮らしなのですが、無職で家にいても何もしないわけですから怒りがたまるわけですよ。
テレビを見ては「日本はダメだな」と言ったり漫画とゲームを繰り返す毎日に父はついにタマ子を叱ります。
それに対して動揺を見せるも「今はまだその時じゃない」と行動しません。
これに対して父も段々とあきれたのか何も言わなくなってきます。
僕も最初の頃は家族に「バイトでもしないの?」とか言われていましたが最近は何も言われなくなりましたね。
家族にとって無職の存在が当たり前になってきているというか。
なので見ていて「なんかこの感じ分かる・・・」と共感しました。
多分怒られて咄嗟に反発したけど本心では「マズい」、「そうだよな」と納得しているはずです。人が怒るときの多くは正論を言われたときでもありますしね。
子供でもなく大人にもなり切れないこの時期って人によってはとことん辛いなと感じます。
何かデカいことをしようとするところに共感
タマ子は父に黙ってアイドルか何かのオーディションに履歴書を送ろうとしていました。
結局バレて恥ずかしくなったのか、辞めてしまったんですけどこの考え方も「凄い分かる~」ってなりました。
自分に才能があるわけでもないし、実績を積んだわけじゃないのにデカいことを成し遂げられそうな気だけ大きくなってるやつです。
でも僕は本当に花が開くかもしれないから送ればいいのに。と思いました。
タマ子的にはこれで落ちたら笑われると思ったのかもしれませんが。
優しくされるとどうしたらいいのか分からない
オーディションに履歴書を送ろうとしていただけなのに、父はタマ子が就職活動を始めたと思って立派な時計を買ってきてしまいます。
それをみたタマ子は「返してきてよ」と拒絶。大掛かりな「期待」と「やさしさ」は無職にとって一番キツイですからね。
毎日ご飯を食べさせてもらっているだけで胸がいっぱいなわけですから、高価なプレゼントなんてもらった日には申し訳なさ過ぎて…ヤバいですね。笑
こんなにリアルな無職のあるあるや周りとの付き合いを描けるなんてすごいと思いました。
と同時にこの映画の凄さに気づくのは実際に無職を経験した人に限られるなと感じます。
学校を卒業してからまともに働いている人はまずこの映画に何の共感もしないでしょう。きっと分からないことだらけだと思います。
「なんでタマ子はそんなに働こうとしないのか」、「なんでせっかくのプレゼントをあんなにも拒絶するんだろう」と。
旧友に会う時の気まずさMAX
実家に帰省しても常に不安が付きまといます。
それは旧友にばったり会ってしまう事。
作中、タマ子もバッタリと会ってしまい連絡してねと言われてしまいます。
上辺では「分かった」と言っておきながら結局、連絡先知らなかったようでそれ以降の展開はないのですが、とても気まずそうなタマ子を見て凄く共感しました。
やっぱり身分も所属もない状態で会う人の怖さって共通なんだなと感じます。
向こうはそこまで気にしないかもしれないけどこっちはめちゃくちゃ気にしますよね。
こういう細かいあるあるもちりばめられているので無職の方は結構見てて「あるある」と思う反面「キツイ…(^^;」ってなるかもしれません。笑
僕も父親に叱られるシーンや友達と再開するシーンは胸が痛かったです。。。
この映画はどんな人におススメ?
この映画は無職の方はもちろん、心が病んでいる方や疲れた方にも見てほしいです。
人間には必ず休息期間というものが必要ですし、「そんなに頑張らなくてもいいんだ」という事を頭に入れるだけでも楽になれるからです。
タマ子のような人が現実にはたくさんいます。実際この映画を観て「病んでたけど元気でた」、「共感した」などの感想をよくみかけます。
時間も1時間17分と短いのでサクッと見れちゃいますね。
もらとりあむタマ子のキャスト・スタッフ情報
スタッフ
監督 – 山下敦弘
脚本 – 向井康介
主題歌 – 星野源「季節」
撮影 – 芦澤明子、池内義浩
照明 – 永田英則、原由巳
美術 – 安宅紀史
録音・整音 – 岩丸恒
録音 – 中山隆匡、小宮元
編集 – 佐藤崇
サウンドロゴデザイン – 池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
プロデューサー – 齋見泰正、根岸洋之
制作プロダクション – マッチポイント
製作 – エムオン・エンタテインメント、キングレコード
配給 – ビターズ・エンド
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